高齢化が進む日本において、訪問診療のニーズは今後ますます高まっていくと予想されています。一方で、全国の訪問診療クリニックでは後継者不足が深刻化しており、事業の継続が困難なケースも増えています。しかし、廃業ではなく「承継(M&A)」という選択肢を取ることで、患者さんの継続的な医療を守り、スタッフの雇用も維持できます。本記事では、訪問診療クリニックを承継するにあたり、事前に準備すべき3つの重要なポイントを、現場目線で解説します。
① 経営・契約情報の整理と“見える化”まず最も重要なのが、「数字」と「契約情報」の整理です。 買い手は、事業の将来性を見極める際に、以下のような情報を必ずチェックします。 ・月間訪問件数とレセプト枚数 ・売上構成(医療保険・介護保険・自費) ・常勤・非常勤医師数と稼働状況 ・訪問看護・薬局・ケアマネとの連携体制 ・車両・医療機器の所有状況 ・物件(賃貸 or 自社)および契約内容 これらの情報が未整理のままだと、「不透明なクリニック」と判断され、譲渡価格が下がったり、交渉自体が破談になるリスクもあります。 ✅ 専門家のアドバイス 「最低限、直近3年分の試算表・訪問件数データ・医師勤務表・物件契約書などを準備しておくと、交渉がスムーズになります」 特に訪問診療は他の診療科と異なり、「医師の稼働時間」と「訪問可能範囲」が経営に直結するため、その可視化が重要です。 ② スタッフ・患者との“コミュニケーション計画”承継において大きなハードルとなるのが、スタッフや患者さんの理解と協力です。 ・「先生が変わるなら辞めます」と話す看護師 ・「他人に診てもらいたくない」という患者やご家族 ・「将来が不安」と感じる事務スタッフ こうした声はどの現場でも実際に起こっています。 しかし、事前に段階的なコミュニケーションを行うことで、不安や混乱はかなり軽減できます。 具体的な計画例 タイミング:実施内容 半年前〜:内部スタッフに非公開で承継を打診。キーパーソンの協力を得る 3か月前:スタッフ全体へ説明会。匿名での相談窓口も用意 1〜2か月前:主な患者さん・家族へ説明開始。医師の同行診療を設定 譲渡直前:院内掲示・郵便による通知などで広く案内。混乱を最小限に抑える 訪問診療は“信頼関係が命”の業種です。数字だけでなく「人の感情」を汲んだ承継計画が不可欠です。 ③ 承継スキーム(方法)の選定とアドバイザーの活用クリニックを承継する方法には、大きく分けて2つのスキームがあります。 1、事業承継(個人・法人問わず承継可能。資産や患者データのみを引き継ぐ) 2、法人株式譲渡(医療法人の場合。法人ごと引き継ぎ、契約や許認可がスムーズ) それぞれにメリット・デメリットがあり、税務・法務・行政の観点から慎重に判断する必要があります。 さらに、行政(保健所・厚生局・市区町村など)への届け出や、医療法に基づく承継許可も必要です。特に在宅療養支援診療所(在支診)や看取り患者が多い施設では、保険点数の引き継ぎに注意が必要です。 このように、承継は単なる「売り買い」ではなく、多岐にわたる専門分野の知識と経験が求められます。 ✅専門家のアドバイス: 「M&Aや事業承継の専門アドバイザーに早めに相談しておくと、買い手探しから行政対応、契約書作成まで一括支援してくれます」 まとめ 3つの準備が承継の“成功率”を大きく左右する訪問診療クリニックを円滑に承継するためには、以下の3つの準備が不可欠です。 1、経営情報の整理と可視化 2、スタッフ・患者との誠実なコミュニケーション 3、適切な承継スキームと専門家の伴走支援 これらを踏まえて早めに準備を進めることで、「誰にも相談できないまま閉院する」という最悪のシナリオを避けられます。 ▶️ 無料相談受付中「まだ承継を決めたわけではないけど、気になる…」 「具体的に何から始めればいいのか分からない…」 そんなお悩みもお気軽にご相談ください。 参考リンク
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