〜相場は?評価方法は?専門家が解説〜
「自分のクリニックは、いくらくらいで引き継いでもらえるのか?」 「赤字でも承継はできるのか?」 訪問診療クリニックの先生方から、最もよくいただくご質問のひとつが**「承継価格(評価額)の考え方」**です。 一般的な企業のM&Aとは異なり、医療機関、とりわけ訪問診療クリニックは**“無形資産の価値”が非常に大きい**分野です。この記事では、専門家の実務に基づき、訪問診療の承継における価格の決まり方と注意点を詳しく解説します。 1. 訪問診療クリニックの承継価格に“相場”はあるのか? 結論から言えば、明確な相場は存在しません。なぜなら、同じ「訪問診療クリニック」でも、地域性・訪問件数・医師数・連携体制・レセプト構成などによって価値が大きく異なるためです。 とはいえ、実務的にはある程度の目安として以下のような算出方法が用いられています。 2. 主な評価方法(3つの視点) (1)実績ベース:営業利益 × 複数年係数
(2)患者基盤・訪問件数ベース訪問診療では、「定期的な訪問患者数」や「月間訪問件数」が価値に直結します。
特に在支診(在宅療養支援診療所)として認定を受けている場合、施設基準・看取り実績などが評価対象になります。 (3)“再現性”と“地域性”
3. 実際の承継価格レンジの一例(実務データに基づく) 患者数/ 医師数/ スタッフ体制/ 承継価格(目安) 約80名/ 1名/ 看護1・事務1/ 約800万〜2,000万円 約120名/ 常勤1名/非常勤1 看護2・事務2/ 約2,000万〜3,000万円 約180名/ 常勤2名/ 看護3・事務2/ 約3,000万円〜8,000万円 ※上記は実際のM&A案件に基づいた参考レンジであり、医師交代リスクや地域特性、物件・設備状況により上下します。 4. 数字だけで判断できない“無形価値”の評価 訪問診療クリニックの評価で重要なのは、「無形の資産をどう可視化し、買い手に伝えるか」です。
裏技的ポイント: これらの情報を事前に整理し、「資産価値」として説明できる資料を作成しておくことで、承継価格は大きく上がる可能性があります。 5. 医療法人 or 個人クリニックで評価が変わる? はい、承継スキームによって評価対象も変わります。 医療法人/個人クリニックの違い ・医療法人の承継(株式または出資持分) 法人単位での承継 全資産・契約・許認可が維持されやすい ・個人クリニックの承継(事業引継ぎ) 許認可や契約の再構築が必要 無形資産・スタッフ継続性が重視されやすい 医療法人の方が手続きは複雑ですが、包括的な引き継ぎが可能で、スタッフ雇用・契約継続・レセプト請求も安定しやすくなります。 6. 買い手が価格を評価する際に重視する“3つの視点 ① 医師体制は維持できるか? → 常勤・非常勤医師の継続有無/引き継ぎ期間の長さ ② スタッフは定着するか? → 看護師・事務スタッフの引き継ぎ意思/労働条件 ③ レセプト・患者構成は安定しているか? → 偏りがなく、施設訪問・在宅バランスが良いか これらは「継続して安定経営ができるか」を判断する大きな材料となるため、数値化して説明できる資料があると評価は上がります。 まとめ:価格は“作られる”もの。数字と情報の整理がカギ 訪問診療クリニックの承継価格は、帳簿上の利益だけで決まりません。 むしろ、「どんな価値を次の担い手に渡せるか」を明確にすることで、評価は大きく上がります。
▶️ ご自身のクリニックの承継可能性・評価を知りたい方へ当サイトでは、訪問診療に特化した承継支援を行っています。 「自院の評価がどのくらいなのか」や「引き継ぎできる状態かどうか」など、お気軽にご相談ください。 関連リンク・資料
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