〜引退を決意したベテラン医師と、地域医療を引き継いだ若手医師の実話〜
「長年続けてきた訪問診療を、誰かに引き継いでほしい」 「地域の患者さんを守ってくれる人がいれば安心して退ける」 そう話すのは、30年以上にわたり地域医療を支えてきたY先生(70代・東京都郊外)。 一方、承継を決断したのは、40代の内科医T先生。勤務医として経験を積みながら、「地域に根ざした医療を自分の手でつくりたい」という想いを持ち続けていました。 この記事では、実際の訪問診療クリニック承継のストーリーを通じて、どのようにして引き継ぎが行われたのか、何が大変だったのか、そしてお互いにどんな想いがあったのかをリアルにお伝えします。 1. 引退を決意したベテラン医師の葛藤Y先生は、1990年代に訪問診療を開始。当初は在宅患者が5〜10名だったものの、地域の高齢化とともに需要が拡大。2020年時点では、常時80名以上の患者を抱える体制に成長していました。 「患者さんとは家族のような関係。でも、自分の年齢や体力、そして家族のことを考えると、そろそろ限界かなと感じていました」 Y先生は、病院や開業医の知人に後継を依頼しようとしましたが、訪問診療の特性(24時間対応・看取りなど)に抵抗を示す医師が多く、思うように後継者が見つかりませんでした。 「廃院」も視野に入ったその時、専門家の紹介でT先生と出会います。 2. 引き継いだ若手医師の決意T先生は大学病院で10年以上勤務した後、在宅医療の現場に興味を持ち、非常勤として複数の訪問診療クリニックで経験を積んでいました。 「病院では“患者の人生の一部”しか見られない。訪問診療は“人生そのもの”に関われる。これを自分のフィールドにしたいと思ったんです」 そんなときに紹介されたのが、Y先生のクリニックでした。 最初は週1回の同行診療からスタート。数ヶ月間かけて患者さんやスタッフと信頼関係を築き、段階的に引き継ぎを進めていきました。 3. 引き継ぎで大変だったこと・うまくいったこと▶ スタッフとの信頼関係構築看護師や事務スタッフは長年Y先生とともに働いてきたメンバーばかり。T先生は、「医師が代わることでスタッフが辞めてしまうのでは」と懸念していたそうです。 「引き継ぎ期間中は、なるべく一緒に動いてもらい、“この人なら大丈夫”と感じてもらえるよう努めました」(T先生) 結果的に、スタッフ全員がそのまま残り、新体制でもスムーズに業務がスタートしました。 ▶ 患者・家族への説明最も神経を使ったのは、患者さんとその家族への説明でした。 ・「長年お世話になった先生がいなくなるのは不安」 ・「新しい先生とは合うだろうか?」 こうした不安の声に対し、Y先生は自ら同行しながらT先生を紹介し、丁寧に橋渡しをしました。 「“Y先生が紹介するなら信じます”という言葉を多くの患者さんからいただき、引き継ぎの手応えを感じました」(T先生) 4. 引き継ぎ後、それぞれの今承継から1年後、T先生は訪問件数を120件/月に増加。新たに訪問看護ステーションとの連携も強化し、“地域医療の新しい形”を実現しつつあります。 一方、Y先生は引退後も非常勤として月に1回、後方支援病院で講義を行っており、「自分のクリニックが今も活躍していることが何よりの喜び」と語ります。 5. これから承継を考える医師へのメッセージ▶ Y先生からの言葉「“自分しかできない”と思いがちですが、想いを受け継いでくれる人は必ずいます。 引き継ぎは“終わり”ではなく、“つなぐための準備”だと思ってほしいです」 ▶ T先生からの言葉「訪問診療の世界に飛び込むのは、確かにハードルが高い。 でも、承継という形なら、ゼロから始めるよりずっと現実的です。 覚悟さえあれば、地域に必要とされる医師になれると思います」 まとめ:承継は“地域医療のバトンリレー”この事例のように、訪問診療の承継は、単なる医院の引き継ぎではなく、患者・地域・医療従事者を未来へつなぐ「バトンリレー」です。 後継者がいないからといって、すぐに廃院を選ぶ必要はありません。信頼できる第三者へ承継することで、先生の想いも、患者さんの安心も、しっかりと引き継がれていきます。 ▶️ ご自身の承継可能性を知りたい先生へ当サイトでは、承継の可能性診断や専門家による無料相談を受付中です。 「自分のクリニックでもこうした承継ができるのか?」という不安に丁寧にお応えします。 関連リンク
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